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【映画レビュー】キングダムの映画をネタバレ全開で語ってみる

キングダムを読んでおり、映画をあまり見ない人の感想

※ネタバレ全開で語りますので、ご了承ください。

  

映画の時代背景

   時は中国の春秋戦国時代のと呼ばれた時代の末期の話です。春秋戦国時代紀元前770年から紀元前221年の間のことを差します。

 

 日本人にはあまりピンと来ないとおもいますので、時代の流れを下記に記します。

夏→殷→周→春秋戦国時代→秦→漢→三国時代

という感じになります。

(詳細に書くともっと細かくなります)

 

 日本の漫画、アニメにコンテンツになぞらえるなら

 夏→殷 →「封神演義」周→春秋戦国時代→「キングダム」秦→「項羽と劉邦」漢→(無数)三国時代

という感じになります。

(コンテンツに関しては私が知ってる範囲で書いてます。もっとあるよっていうのがあれば教えてください)

  

映画のストーリーをざっくりと

 戦災孤児となって奴隷になった信と漂。彼らは奴隷の身分を抜け出すために剣を鍛える。ある日、昌文君が漂を見出し、王宮に召し上げられる。

 数日後、信のもとに傷だらけの漂がたどり着き、地図と剣を託す。王宮では王弟がクーデターを起こしていたのだ・・・。

(詳しいことは公式サイトへ)

 

 

良かった点1 キャラクター

 キャラクターが漫画(原作)に寄せてきながら、ちゃんと実在感をもった人物として上げている点です。

 原作がある作品でありがちなのがキャラに寄せ過ぎようとして失敗、もしくは映画監督などのオリジナルの「解釈」を取り入れて失敗というのがあります。

 前者は、典型的な日本人顔の役者さんに外国人顔のキャラクターを無理やりはめ込んで失敗するパターンがあります(その役者さんには罪はないですが、アップになるたびに見ている人の気持ちを下げます)。後者は、「あのキャラはそんなこと言わない or そんな行動をとらない」となり、そのキャラクターが写る度に物語への没入感をそぎます。

 この映画の素晴らしいところは、どのキャラクターを見ても、説得力を持って「実在する」という実感を持たせてくれたのはすごいと思います。

 

 この物語の肝の一つとして「政と漂」という二人の人物が全く別人だったということがきちんと伝えられていたことです。私は演技論や演出論はさっぱりわかりませんが、あの映画をみて「政と漂は別人」ということがわかりました。

 政の陰に一ミリでも漂の影を見せてしまえば、この映画は失敗だと思いますが、観賞中は全く気にならず、あとから思い返して気が付いたほどです。吉沢亮さんの演技は素晴らしいと思いました。

 その他のキャラクターについては、語っていくと際限がないので割愛します。とにかく素晴らしかったです。

 

良かった点2 邦画にありがちが少なかった

 邦画にありがちな「説明セリフの長回し」「怒鳴りあいの議論」がなかったことです。

 「説明セリフの長回し」について

 いままでの邦画なら王宮に突入する前のシーンで以下の点をすべてセリフで説明していたと思います。

1.呂不韋が今遠征にでていること

2.呂不韋が20万の軍を持っていること

3.成蟜(王弟)が8万の軍しか集められなかったこと

4.呂不韋が国王の地を狙っており、そのためには政に成蟜に討たれて欲しいこと

5.成蟜(王弟)が呂不韋に対抗するためには10万以上の軍が必要なこと

ですがこの映画は。1、2、4は地図とコマで説明し、3、5に関してはすでに策が発動されている状態で「影ナレ(でいいんでしたっけ?)」で表現されてました。

 わかりやすくすんなりと頭にはいってきました。

 

 「怒鳴りあいの議論」

 いままでの邦画ならおそらくこういうやり取りが入ってると思います。

信「8万だろうが10万だろうが俺が全部ぶった切ってやるよ!!」

政「そんなことできるわけないだろ!!」

 こういう見苦しい(?)議論が延々繰り広げられてたと思います。

 

 話のテンポを損なわないようなシーンがなかったのが良かったと思います。

 

良かった点3 原作改変が与えた物語の深み

  この映画と原作との大きな変更点はランカイと左慈の登場を逆にし(左慈をラスボス)、左慈を元将軍にしたことです。

 戦国時代では兄と弟との王位争いなど日常茶飯事です。長子が何もせずに存続できるというのは今の感覚です。世が乱れているときは弱肉強食で、肉親同士で争うことは珍しいことではありません。あの桶狭間で敗れ、ボンボンの代名詞と思われてる今川義元は六男です。兄達を排除して戦国大名に名乗りを上げた人物です。それだけ戦国時代の王権争いは苛烈なものです。

 仮に左慈が成蟜を真の王として立たせるのであれば堂々と宣言すればいいのです。

「秦の王として政様より成蟜様の方がふさわしい」

 ですが、左慈の身分は用心棒みたいな立ち位置です。また、左慈は猫背で出てきます。自らの行いに自身があるのであれば、背筋は伸びているはずです。

 ここに映画ならではの深みが出てきたと思います。

 

良かった点4 「夢」というキーワードが持つ深み

 最終決戦時に「夢」といキーワードを持つ人が出てきます。

・将軍になる「夢」をもっている信

・将軍になったが何らかの理由で「夢」を捨てた左慈

・将軍になり秦の6将となり「夢」をかなえた(?)王騎

 

 王騎は信がなりたい将来の姿であり、左慈は信がなりたくない将来の姿です。その二つを対比させることにより色々と深みが増します。

 

 この物語ではとんでもない夢を持っている人がいます。それはもう一人の主人公である政です。彼は「500年の戦乱を終わらせる」という実現不可能と思われる「夢」を持っています。信が上を見て夢を語るのに対し、政は真っすぐ前を向いて「夢」を語ってます。この対比も素晴らしいところです。

 

 

ちょっとダメだった点1 ちょっとくどい

 漂がなくなるシーンが劇中二回繰り返されます。正直いらなかったと思います。映画というのは集中してみるものです。信が「夢」とか「漂と一緒に」といえば観客は勝手に冒頭のあのシーンを思い浮かべますので、もう少し観客をを信頼してもいいかと思いました。

 

ちょっとダメだった点2 クーデータで漂が囮になるシーン

 漂が囮になるシーンで、アップが主でした。できれば俯瞰のシーンを一つ入れてほしかったです。漂のおかげで我々(壁さん達)が助かりました、というのが明確にわかるシーンが欲しかったです。

 

次作で期待する点1 戦列に騎馬で突っ込んで欲しい

  キングダムでの見せ場と言えば将軍が騎馬で敵戦列歩兵に突っ込むシーンがあります。実写でみたいです。

 

次作で期待する点2 王騎と謄の漫才(?)

 尺の関係で入ってませんでしたが、王騎と謄の漫才が欲しいです。ちなみに両方ボケですw。

 

 

総評

  宇田丸さん風に表現するにはこの映画は「5億点」です。原作ファンは絶対に見に行ってください。原作見たことない人は映画をみて、原作も見てください。絶対に面白いと思います。